ー闘牛において「名牛」とはどのような牛をいうのでしょうか?
亀山:これはよく聞かれるけど一番答えに困る質問なんよね。
上甲:『名牛』いうのは色んな捉え方があるんよな。
亀山:例えば横綱になってチャンピオンになる牛だけが名牛かというと、そうじゃない。
たとえば競馬の「ハルウララ」みたいに、闘牛にも負けても負けても挑み続ける牛がいるんよね。牛も人間と同じで負ければ痛い思いもするから負けるとなかなかやらなくなるのがほとんどなんよ。
でも、こういうガッツのある牛が勝ったりすると、そりゃ会場も盛り上がって「良い試合だったなぁ」となるわけですよ。
これは『闘牛を盛り上げてくれる存在』として、名牛と言えるよね。
事務局:闘牛場を離れて愛好会や展示に連れて行った時に、慣れない場所でも穏やかで闘牛を広く伝えるのに貢献してくれる名牛もおるしな。
亀岡:調教師や牛主さんたちに可愛がられるから、どの牛たちも名牛に育っていくんやろうね。
亀山:宇和島闘牛には人に優しい牛、闘牛を盛り上げてくれる牛がたくさんいるんよね。
勝ち続けた牛だけでなく、色々な要素を持った牛たちそれぞれが名牛やと思っとるんよ。
▲試合中は目をギラつかせ、激しくぶつかりあう
▲普段は穏やかな表情をしている
ー長い歴史を持つ宇和島闘牛ですが、特に皆さんの印象に残っている試合はありますか?
亀山:歴代のいい試合というのは、毎場所いい試合があるから選びにくいなぁ。 試合時間が長くても短くても牛たちは全力で試合をしてるわけだしね。
事務局:勝ち続けた牛、というなら「金剛力」いうのがおったな。6年間チャンピオンの座におったんよ。 この「金剛力」と「奥野建設」の最後の一番がすごかったなぁ。
▲宇和島観光闘牛協会 上甲勢子会長
上甲:あの試合か!
あれはすごかったな!今でもよく覚えとる。
わしは「金剛力」の相手方の「奥野建設」に勢子でついとったんやけどな、両方の角が押し合ってギィギィものすごい音がしてなぁ。
そうやって押し合いしよるうちに、「奥野建設」の角の根元から血が出てきてしもてなぁ。
それでも「奥野建設」は闘うことをやめんのよな。あの闘争心は本当にすごいね。
それで「あっ!」と思った次の瞬間に角が抜けてパーンッと飛んでしもたんよ!まぁ、これがびっくりするような音やったわい!
さらに驚くのはそうやって角が飛んでしもたのに、牛たちは闘い続けるんよなぁ。
結局この一番は引き分けたんやけど、両牛の戦いぶりには圧倒されたわい。
曽根:観客に好まれる試合というなら、小さい牛が大きい牛を倒したときは、そりゃ盛り上がるね。
事務局:柔道と近いところを感じるんかね。
ちょっと考えただけでも、すごい試合は本当にいくらでもあるわい。
亀山:結局、印象に残る試合っていうのは見た人それぞれが決めるんやね。
実際に闘牛場に足を運んで、目の前の土俵で繰り広げられる試合を見たら、それが必ず印象に残る試合になるよ。
▲宇和島観光闘牛協会 曽根副会長
宇和島闘牛における数々の名牛、数え切れない名勝負。
話はいよいよここでしか聞けない舞台裏エピソードへと進んでいきます。
【闘牛を愛する男たちの座談会 バックナンバー】
第2回:心に残る牛たちの闘い 言い尽くせない宇和島闘牛の名牛