通い合う気持ち。

レポートの最後となる今回は第1回でご紹介した元横綱「隆羽パンダ」の牛主で、年5回の宇和島定期闘牛大会を運営の面からも支えている亀山さんに、牛主の魅力について伺いました。

 

亀山さんは牛主になって7年目(2007年2月現在)。これまで4頭の牛主を務めてきました。

きっかけとなったのは、ある牛主との出会いから。

牛主の減少という闘牛の世界が抱える問題を聞いて、宇和島闘牛の保存と、その長い歴史に参加したいと思ったのだそうです。

 

「牛が勝つとね、夫婦の仲が良くなるんよ。」

亀山さんの奥様、隆羽パンダ、亀山さん
▲写真左から亀山さんの奥様、隆羽パンダ、亀山さん

実際に牛主になってみると、闘牛大会で牛が勝ったときの喜びを共有することで、牛を通して相手を思いやる気持ちが強くなったと言います。

この日も、愛媛隆羽ファームに奥様と一緒に牛の様子を見に来られていました。

▲亀山かめやま 充孝みつたかさん

宇和島市闘牛実施委員会副委員長

宇和島観光闘牛協会副会長

隆羽パンダ

▲隆羽パンダ

沖縄出身、16歳。沖縄で無敗の戦績を収め、宇和島にやってきた。宇和島でもその最強ぶりを魅せつけた名将。


闘う牛の現実。
牛主の心構え。

奥様は自らクシを手に「隆羽パンダ」に話しかけながら毛並みを整えてあげます。「隆羽パンダ」はとても安らいだ表情をしています。

きれいになったところで持参したバナナを皮ごと与えていました。「この子はバナナが大好きなんよ。美味しいね~。」

 

もくもくとバナナをほおばる「隆羽パンダ」。バナナが好物なんて意外でしたが、本当に美味しそうに食べています。たくさんあったバナナはあっという間になくなってしまいました。

いつもこうして大好物を持ってきてもらえるなんて羨ましい!

「隆羽パンダ」は亀山さん夫婦が来ると、様子が変わってソワソワし始めるのだそうです。

いつもよくしてくれる亀山さん夫婦をちゃんと覚えているのですね。愛情が伝わっている証拠でしょう。


 

 しかし、亀山さんが牛主として一番気をつけていることは、「情を移さない」ことだというのです。


牛主の愛情を理解し、答えてくれているのに情を移さないなんて至難の業では・・・

そこには牛主と闘牛という関係だからこそ、避けては通れない現実がありました。

 

戦いに負け、大きく傷付いた牛は二度と闘牛場に立つことはなく、手放さないといけないのだそうです。

情を移してしまえば別れのつらさは何倍にもなってしまうのでしょう。

 

しかし、闘牛は家畜や食用の牛に比べるとずっと幸せだと亀山さんはおっしゃいます。

食用の牛の寿命は長くて3年。それに比べ闘牛は3歳でデビューし、7~8歳で全盛を迎えます。

その後も10年以上生きる牛がほとんど。

体を洗ってもらったり、大好物をもらったり・・・これほど大切に世話をしてもらえるのは牛の中では闘牛だけでしょう。

▲動物用のシャンプーで洗いながら、同時に毛繕いをする

体を洗い終えた後、角に馬油を塗る。

牛の角は乾燥するとひび割れの原因になるため、馬油を使って乾燥を防ぐ。


生まれる絆。
歴史の継承。

強い闘牛を育てるために必要なのは、血統と優れた調教師の存在だそうです。

普段、「隆羽パンダ」の世話をするのは調教師の盛さんです。牛主として自分の牛を預けている亀山さんは盛さんに強い信頼を寄せています。

盛さんを“素晴らしい調教師”と評価する亀山さんに、盛さんは恥ずかしそうに恐縮していました。


牛主になるために特別な資格はいりません。

「ぜひ気軽に牛主になって欲しい」と亀山さんと盛さんは口を揃えます。

牛主が増えることで、闘牛大会がもっともっと盛り上がることが期待できますね。

 

 

牛主になりたい人、興味のある方は、宇和島市営闘牛場へお問い合わせください。

電話:0895-25-3511


4回に分けてお届けした「愛媛隆羽ファーム」の闘牛レポートですが、戦いの場とは違う普段の牛たちの姿や、宇和島の闘牛を支える人々の想いを、わずかではありますがお伝えできたのではないかと思います。

 

「愛媛隆羽ファーム」は、事前に連絡をすれば飼育所内を見学させていただける(注)とのことですので、闘牛大会とは違う表情の牛を見に行かれてはいかがでしょうか。

注:見学をご希望の方は、宇和島市営闘牛場へお問い合わせください。

電話:0895-25-3511