レポート初回は、宇和島市から車で走ること30分、鬼北町の『闘牛ブランド愛媛隆羽ファーム』にお邪魔しました。これから4回に分けてたっぷり、闘牛の厳しくも実は優雅な舞台裏を紹介していきたいと思います。

 

今回は、施設の紹介と期待の新人、負け知らず5連勝中の「黄金(こがね)パンダ」をご紹介します。案内していただいたのは、盛(もり)福太郎さん(右写真)。ハツラツとした元気な声で、牛に負けず劣らずの勇ましい方でした。

 

鬼北町中心から車で3分ほど山に向かって走ると、『闘牛ブランド愛媛隆羽ファーム』の牛舎が見えてきます。取材したこの日は天気が良く、ぽかぽかとした春の陽気につられて取材への意気込みが沸いてきました。

まず、牛舎が見えるのと同時に目に飛び込んできたのが山沿いにずらりと並んだ牛たち!

実は私、恥ずかしながら闘牛の牛を見るのは今回が初めてなのです。「大きい・・・。怖い・・・。」というイメージしかありません。闘牛の牛は普段から闘志に満ちていて荒々しく、ひょっとすると取材中に自分の身に危険が?なんて、少々緊張していました。

ところが意外にも、牛たちはのどかに日なたぼっこ?をしていたのです。それでも体の大きな牛がずらりと勢揃いしている光景には、のっけから圧倒されてしまいました。

「普段はのんびり日なたぼっことかさせているのですね~。」と盛さんにお聞きしたところ、「これも立派なトレーニングなんですよ!」との事。トレーニング?日なたぼっこが?少しだけ牛になりたいと思ってしまいました・・・。(笑)

よく見ると牛たちは、急所である鼻先を綱で繋がれており、首がやや上を向く長さに調節しています。よって牛たちは、疲れても座れず、下を向くこともできず耐えるしかありません。こうすることによって首の筋肉を鍛えているのだそうです。天気の良い日はなるべく外に出してやって、日が沈むまでこのトレーニングを続けるとのこと。長時間このままの体勢なんて、さぞかし大変でしょう。人間でいうと、空気椅子みたいなものですかね。日が暮れるまで空気椅子。考えるだけでおぞましい。こういった日常の訓練によって、たくましい体が出来てくるんですね。試合の時に、ドンという鈍い音を立てて頭をぶつけ合ってもビクともしない首は、こうした訓練で鍛え上げられてるのですね。

ちなみにこのトレーニング方法は、盛さんが徳之島の師匠である伊藤範久さんに教わったものだそうです。

もり 福太郎ふくたろうさん

鹿児島県の徳之島から闘牛のために宇和島へやってきた闘牛に人生をかける熱い男。

幼いころから闘牛を身近に見て育ち、自然と闘牛の世界へ。今では期待の調教師。時には鬼のように厳しい訓練をされるとか。


宇和島式と沖縄・徳之島式。

盛さんに最初に案内していただいたのが牛舎です。『闘牛ブランド愛媛隆羽ファーム』では、牛を”1軍”と”2軍”に分けて飼育していました。まるでプロ野球チームみたい。

”1軍”は沖縄・徳之島式の牛舎です。こちらは柱を中心とした造りで見渡しがよく、牛舎の中でも風が適度に通りぬけていきます。牛は夏の暑さに弱いとのことなので、こういった牛舎の造りは、暑い地方ならではの知恵と工夫だとか。

”2軍”の牛は宇和島式の牛舎です。こちらは1棟1棟が個室のように壁に囲まれています。

沖縄・徳之島式と宇和島式の牛舎の違いは、この壁があるかないかで、沖縄・徳之島式の牛舎の方が牛の様子を見渡せて、具合の悪い牛を早期に発見し、対応できるなどの管理がしやすい利点があるそうです。

「試合の等級があるやろ。試合で強いやつが1軍で、弱いやつが2軍。勝負の世界なんよ。」

と盛さんは厳しい表情で話してくださいました。

▲写真左が1軍の沖縄・徳之島式牛舎、右が2軍の宇和島式牛舎

徳之島の闘牛

全国でも有数の闘牛の町として知られる。鹿児島の南380キロの位置にあり、人口約2万8千人。

 島内には大小合わせて十数か所の闘牛場があり、年20回以上もの大会が催されている。闘牛大会は常に観客であふれているという。この数から島民にとって闘牛がごく身近であることがうかがえる。


将来有望!
偉大な父の血を受け継ぐもの。

つづいて盛さんが少し興奮気味に紹介してくださったのが、期待の新人「黄金(こがね)パンダ」。この牛、 私が取材に来てからずっとこちらを見て、目を離さないんですよ。佇まいも他の牛とは何かが違う・・・。遠くにいても威圧感がありますし、まったく隙がないのです・・・。「黄金パンダ」は現在4歳。闘牛として戦える全盛期が7~8歳ということですから、4歳にしてこの堂々たる風格は、ただものではないことがうかがえます。

▲絶え間ない熱い視線の記録・・・。「黄金パンダ」が映っている写真は全て、こちらを見つめていました!

戦歴をお聞きしたところ、この「黄金パンダ」、なんと現在5連勝中の負け知らず。血筋もよく、次回のレポートで紹介予定の元横綱「隆羽パンダ」(右の写真)を父に持つ、馬でいうとサラブレット。

盛さんの語りにも力がこもります。

「この首太いやろ!この肩幅、前足の開き!角の形も作ったんよ!」

「黄金パンダ」は、生まれも育ちもここ闘牛ブランド愛媛隆羽ファーム!手塩にかけて世話をしてきた牛がこんなに立派に育ってくれたら、力も入るってものです。

「黄金パンダ」の今後の活躍に期待したいですね!

 

次回は、四月場所で横綱として出場した「ラオウ」のトレーニング風景をご紹介します。お楽しみに!

顔に大きな白い模様があり、その名の通り顔がパンダに似ていることから、通称”パンダ”と呼ぶ。

こうした由来で”パンダ”と名の付く牛は数多くいる。

▲隆羽パンダ

沖縄出身、16歳。沖縄で無敗の戦績を収め、宇和島にやってきた。宇和島でもその最強ぶりを魅せつけた名将